角田喜久雄
 つのだ・きくお(明治39〜平成6)
 伝奇時代小説と探偵小説の2本柱のそれぞれで人気を得ています。伝奇小説の方も魅かれるタイトルのヤツは何冊か買ってはあるのですが(『髑髏銭』等)読んでいません。でも、どうやら推理風味付けの作品もあるみたいで今後の僕の課題です。





『歪んだ顔』
京都日々新聞社 S22
  少年物では読んだのですが、この大人物はまだ読んでません。この小説は喫茶店で奇妙な事件を目撃するというシーンから始まるのですが、角田の小説はこの始まり方が異常に多いです。僕が読んだだけでも、10作ぐらいはあると思います。
『緑亭の首吊男』
鷺丿宮書房 S22
緑亭の首吊男・蛇男・三銃士・密告者・恐水病患者・発狂・下水道
  タイトルはシムノンの『サン・フォリアン寺院の首吊男』のもじりでしょうが、にしてもカッコイイタイトルです。すべからく探偵小説のタイトルはこうあって欲しいものです。この話のトリックは現在では通用しません。でも探偵小説はこれでいいのです。科学捜査なんか「おととい来やがれ」です。
『虹男』
矢貴書店 S23 奥付最終ページ欠け
  金魚屋敷と呼ばれる館、そこに棲む怪しい人々、さいづち頭、狂喜の芸術家、美しき令嬢、復員兵、あかずの間、深夜徘徊する謎の人物、そして連続殺人、舞台装置は申し分ありません。一般的には角田の代表作は『高木家の惨劇』だということになってますが、僕にとっては、この作品の雰囲気勝ちです。最終ページが切れていたので安く買えました。知り合いのよしださんが最初に手にとったのですが、「最後がないならいらないや」と買いませんでした。でもこの手の本には珍しくそこは解説だったのです。あとで教えると悔しがってくれました。
『蜘蛛を飼ふ男』
岩谷選書 S25
蜘蛛を飼ふ男・Yの悲劇・緑亭の首吊男
  『高木家の惨劇』がこの岩谷版ではこういうタイトルに変えられました。初出誌では『銃口に笑う男』ですから、ややこしいです。ちなみに「蜘蛛を飼う男」と「銃口に笑う男」は別人です(笑)。前半は単調ですが、トリックが判明してから面白くなり、犯人の予想がついてからはさらに面白くなる、という奇蹟のような作品です。ちと褒めすぎました。タバコの使い方(トリックに非らず)が最高にいいです
『霧に棲む鬼』
文芸図書出版社 S27 函
  事件に巻き込まれる女性の目線で事件を描く、巻き込まれ型のストーリーのようです。ようです、というのは読んでいないからです。やっぱり、この手の話は読むのが後回しになってしまいます。
角田喜久雄探偵小説選集
桃源社 S30 函
  全7巻ですが僕は4冊しか持っていません。最初5巻の予定が途中から7巻になってしまったせいで、最後の2冊がキキメになっています。僕が某古書市で見つけたときは4冊並んでいたのですが、実はその寸前に、彩古さんという友達に6、7巻を抜かれてしまっていたことが後に判明して悔しい思いをしました。それ以後、何度かこの全集を目にするのですが、見事に6、7を見ることはありません。この手の全集本の函装丁はシンプルなのが普通ですが、地に淡いレンガ模様のイラストが使われていて奇麗です。
1『黄昏の悪魔』
黄昏の悪魔・緑眼虫
  これも『霧に棲む鬼』と同じく女性主人公巻き込まれ型ストーリーです。
3『歪んだ顔』
 僕が買ったこの本と『虹男』はゾッキだったみたいで、箱の底に赤マジックの線があるのが気になります。
4『奇蹟のボレロ』
奇蹟のボレロ・霊魂の足
  『奇蹟のボレロ』のトリックは、ちょっとずるいです。『高木家の惨劇』のトリックもそうでした。でも、そこだけに頼ってない(読ませどころはそこにはない)ので、後半の面白さが損なわれていません。『霊魂の足』は「ど本格」です。「どパズラー」です。お勧めです。
5『虹男』
『たそがれの悪魔』日本名探偵文庫4
ポプラ社 S30
  ふと思うんですが、こういう少年物を当時買ってもらった人というのは、大変なおぼっちゃんだったのではないかと。僕の場合だと、たまに本を買ってくれるときは、世界名作全集のようなもの。誕生日などでおねだりが許されるときはこの手の本を買ってもらいましたが、それでも年に2、3冊。乱歩を買ってもらうだけで精いっぱいでしたから。
『ゆがんだ顔』日本名探偵文庫11
ポプラ社 S31
『黄昏の悪魔』推理小説名作文庫
桃源社 S32
黄昏の悪魔・緑眼虫
『悪魔のような女』
桃源社 S34 函
悪魔のような女・汚れたハンカチ・私は誰だ・崖上の家・四つの殺人・沼垂の女
  『沼垂の女』は非探偵小説、奇妙な味系ですが、いい雰囲気です。沼垂は「ぬったり」と読みます。『笛吹けば人が死ぬ』は「法律で『ハーメルンの笛吹き男』を裁くことが出来るか?」というのがテーマです。とても30P足らずの短編とは思えないほど、話はつまってます。この作品で日本探偵作家クラブ賞を受賞しました。
『妖美館』怪奇探偵小説選集 
東西文明社 S31 背割れ
  彩古さんから安く買いました。時代物でまだ読んでいないのですが、ぱらぱらっとめくったページはどこもプンプン匂ってます。「怪奇探偵小説選集」ああ、なんてすばらしいサブタイトルではありませんか。真っ赤な血がしたたる表紙デザインにぴったりです。うう、妖美館てどんな館なんだろう。今ちらっとめくってみたら、女がふらふらとそこへ迷い込むシーンでした。今晩読む本はこれに決めました。
『角田喜久雄・高木彬光集』現代長編小説全集
講談社 S34 函
高木家の惨劇・黄昏の悪魔
  長編2本を選ぶとなると本格の『高木〜』とスリラーの『黄昏〜』ということになるのでしょう。
『高木家の惨劇』
春陽文庫 S48 10刷り
『霧に棲む鬼』
春陽文庫 S51
『奇跡のボレロ』
春陽文庫 S51
奇跡のボレロ・霊魂の足
『黄昏の悪魔』
春陽文庫 S51
黄昏の悪魔・緑眼虫
『笛吹けば人が死ぬ』
春陽文庫 S55
笛吹けば人が死ぬ・霊魂の足・Yの悲劇・沼垂の女・冷たい唇・私は誰だ・翳のある歯・悪魔のような女・汚れたハンカチ
『東京埋蔵金考』
中公文庫 S55
  非探偵小説です。徳川家を初めとする埋蔵金の言い伝えや、その発掘を夢見る人々の物語です。
『神変白雲城』
中公文庫 93年
 これも非探偵小説。タイトルどおりの話です。文字はでかいわ、挿し絵が入っているわ、アリャこれは少年物ではないかいな。この本のどこにもそのことが触れられていないのですが、お父さんが買ったら怒ると思うぞ。この中公文庫の2冊は探偵物ではないのですが、あまり知られていないのでこのリストにいれました。
『怪異雛人形』大衆文学館
講談社文庫 95年
怪異雛人形・鬼面三人組・美しき白鬼・恋文地獄・自殺屋敷・悪魔凧・逆立小僧
  初期の捕物帳作品ですが、もちろん探偵小説です。
『奇蹟のボレロ』探偵クラブ
国書刊行会 94年
緑亭の首吊男・怪奇を抱く壁・霊魂の足・Yの悲劇・髭を描く鬼・黄髪の女・五人の子供・奇蹟のボレロ
 『高木家の惨劇』を除くすべての加賀美シリーズが収録されています。
『大下宇陀児・角田喜久雄集』日本探偵小説全集3
創元推理文庫 85年
発狂・死体昇天・怪奇を抱く壁・高木家の惨劇・沼垂の女・悪魔のような女・笛吹けば人が死ぬ
『下水道』探偵小説傑作選
春陽文庫 96年
蛇男・ひなげし・豆菊・狼罠・ペリカンを盗む・浅草の犬・三銃士・発狂・死体昇天・密告者・ダリヤ・Q・下水道
  この本を含む上3冊が現在でも入手できますが(国書のは、どうやらゾッキになったみたいですが)、この3冊で3編しかダブっていないという奇蹟的な編集方針に拍手を送りましょう。