春陽文庫
  まえがき
 
生まれて初めて読んだ文庫本がここでした。そして初めて買った文庫もこの出版社のでした。小学生の時に友人の家に遊びに行ったときに一冊の本を見つけました。「この本なに?」「おばさんにもろた。ほなけど難しそうやけん読んどらん」僕はその本を借りて帰りました。この作者の本は図書館で散々読んだけれど、その本は僕の知らない何か別の輝きを放っていました。1ページ目から引き込まれました。知らない漢字がいっぱい出てきましたが、気にせずに読みました。面白さに愕然としました。大人達に騙された気がしました。こんな面白い物があったなんて! 自分等は隠れてこんな物を読んで、それで僕らには別なものを与えて黙らせていたなんて! 僕はこっそりと読み続けました。中学生になって増えた小遣いで、その本を買いました。その作者の別の全集を買いました。そうして------、気づいたらこんな人間になっていました。乱歩作『陰獣』。あの時この本との出会いがなかったら、どういう人生になっていたのでしょうか。
  春陽文庫とは
 
コレクター泣かせの本です。創元推理文庫も困ったもんですが、ここにはかないません。何が出ていて、何が絶版なのか? どれが新作で、どのシリーズなのか? 何にもわかりません。巻末目録が当てになりません。20年前に絶版になった作品が平気で新刊の目録に載っています。なにかの気まぐれで、目録が毎月更新されたかと思えば、突然停止して、何年もそのままです。信用してエラい目にあいました。なじみの本屋さんに聞いてみたら「ここの目録は信用しちゃ駄目」と言われました。目録はそういう有り様ですが、一番の原因は(他の出版社がみんなやっている)「本のカバーそでに同じ著者の作品リストを入れる」をやらないことです。せめて、これさえやってくれれば悩みの半分は無くなるんですが。
 しびれが切れて出版社に直に電話してみました「この本を探しているんですが、もう絶版なのでしょうか」「いえ、絶版ではないと思いますよ」「じゃぁ、探せばあるんですね」「いやぁ、難しいと思いますよ」「じゃ、本屋さんに注文すればいいんですか」「さぁ、ウチにもあるかどうか」「わからないんですか?」「わかりませんね」「どなたか、わかる人はいますか」「さぁ……」「……じゃ、増刷の予定とかは?」「ないと思いますけど」「それは絶版だということとは違うんですか」「違うと思いますけど」この調子でした。僕の人生がもう一回あるなら、この出版社に入って、それできちんと目録を整理したい。マジにそう思うこのごろです。
  春陽堂文庫と春陽文庫
 
春陽堂はかって「日本小説文庫」「世界名作文庫」「春陽堂文庫」「春陽堂少年文庫」の4つの文庫を持っていましたがその後「春陽堂文庫」に統一、これが現在の「春陽文庫」になりました。なお、昭和6年から昭和19年までの春陽堂の刊行目録は『ニッポン文庫大全』(ダイヤモンド社・97年発行)に載っています。調べた人に頭がさがります。


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探偵双書
『畸形の天女・十三の階段』と
『厨子家の悪霊』
山田風太郎



入手困難な鮎川哲也『夜の疑惑』
三橋一夫『ふしぎなふしぎな物語』



『日本探偵小説全集』

『江戸川乱歩名作集』の函
「NHK、明智探偵事務所放映中」
のシールあり。



春陽堂文庫
(注意)このコーナーで取り上げている「探偵双書」と「日本探偵小説全集」は正確には春陽堂文庫ではありませんが「春陽堂の文庫サイズの本」ということで無理矢理仲間にしてあります。 
『畸形の天女・十三の階段』(探偵双書13) S30
「畸形の天女」
江戸川乱歩・角田喜久雄・大下宇陀児・木々高太郎
「十三の階段」
山田風太郎・島田一男・岡田鯱彦・高木彬光
 連作短編集、自慢の逸品です。「畸形の天女」の方は最近復刻されました。
『厨子家の悪霊』(探偵双書7) S31
山田風太郎
厨子家の悪霊・誰も私を愛さない・恋罪
 これも自慢の品です。表題作はしばらく幻の作品でしたが、一昨年ハルキ文庫で復刻されました。
『恐怖の歯形』 S13 34刷り
大下宇陀児
『大金塊』 S14 12刷り
黒岩涙香
『展望塔の死美人』 S16 18刷り
小酒井不木
展望塔の死美人・呪はれの家・死の接吻・通夜の人々・三つの痣・指紋研究家・眠り薬・緑柱石の宝冠・蜀江の錦・恋魔怪曲
 春陽堂文庫は現在の文庫より1センチほど縦が長くなっています。『恐怖の歯形』と『大金塊』は古本友達の彩古さんより安く譲ってもらいました。

日本探偵小説全集

『姿なき怪盗』
甲賀三郎
『三角館の恐怖』
江戸川乱歩
『石の下の記録』
大下宇陀児
『わが女学生時代の罪』
木々高太郎

『完全犯罪』
小栗虫太郎
『蝶々殺人事件』
横溝正史
『不連続殺人事件』
坂口安吾
『昼なき男』
島田一男
『刺青殺人事件』
高木彬光

『猟銃・恋愛曲線』
城 昌幸・小酒井不木
『天国荘綺談・押絵の奇蹟』
山田風太郎・夢野久作
『偽眼のマドンナ・電気風呂の怪死事件』
渡辺啓助・海野十三
『ある決闘・死刑(リンチ)』
水谷 準・大坪砂男
 文庫なのにハードカバーのカッチョイイ全集。全16巻ですので、あと3冊見つけなければいけません。


春陽文庫
蒼井 雄
『船富家の惨劇』 S49 9刷り

鮎川哲也

『夜の疑惑』 S40
無人踏切・緑色の扉・虚な情事・霧笛・夜の挽歌・夜の疑惑
 『海辺の悲劇』と共に探すのが最も困難な本です。ダブった人からもらいました。感謝に堪えません。
『誰の屍体か』 S52 13刷り
誰の屍体か・一時一〇分・他殺にしてくれ・消えた魔術師・冷凍人間
 一時期、冷凍人間だけが削られた本が出たようです。なぜそんなことをするんでしょう。それが春陽文庫の不思議です。
『誰の屍体か』 S62
 上記の新装版です。
『りら荘事件』 S51
 新装初版

江戸川乱歩

『陰獣』 S31 6刷り
『月と手袋』 S36 4刷り
月と手袋・地獄風景・モノグラム・日記帳・覆面の舞踏者
『パノラマ島奇談(改訂版)』 S39 6刷り
パノラマ島奇談・白昼夢・鬼・火縄銃・接吻
『三角館の恐怖』 S48 55刷り

『三角館の恐怖』 S49 63刷り
 下は上のイラストトリミング違い本。そんなことをする理由がどこにあるのでしょうか。ああ、油断できない春陽文庫。この2冊は一年違いの発行なのに定価が160円と260円です。オイルショックがあった年でしょうか。同じ本を2冊持っているとこういう発見もあります。
『江戸川乱歩名作集全9巻』 S37〜
 乱歩の短編を集めたものです。この本が僕をこの道に引っ張り込みました。最初は全7巻でしたが、11年後に2冊出て全9巻になりました。実家に1セット。こちらで集めたのが1セット。なのに古書市で函に入ったのを見つけたせいで、また1セット買う羽目になってしまいました。
『江戸川乱歩長編全集全20巻(白背)』 S48〜
 現在流通している全集の前の版です(現在のはこれに『名作集全9巻』と『三角館の恐怖』を合わせて全30巻にしています)。手元にあるのは最近集めたヤツですが、実家にあるのは全部初版です。というのも、僕が『名作集』で乱歩を知ったあとに、この全集の刊行が始まったからです。毎月最初の日曜日になると、遠くの街まで自転車で買いに行きました。

大下宇陀児

『殺人請負業者』 S26
嘘つき娘・美加殺し・青い鞄の話・手錠・兇漢・殺人請負業者・地底の悪夢
『真夏の殺人』 S27
R灯台の悲劇・金色の獏・黄金魔・殺人映画・蛞蝓綺譚・盲地獄・真夏の殺人
『宙に浮く首』 S5 18刷り
宙に浮く首・たそがれの怪人・画家の娘
『奇跡の扉』 S51 11刷り

小栗虫太郎

『完全犯罪』
完全犯罪・二十世紀鉄仮面
甲賀三郎
『乳のない女』 S41
『姿なき怪盗』 S52 24刷り
斉藤 栄
『殺人の棋譜』 S49
 古本屋の50円コーナーをのぞいていたらこの本がありました。欲しくなかったのですが、乱歩賞受賞作なので「まぁいいか」とひろってきました。
島田一男
『錦絵殺人事件』 S39
『古墳殺人事件』 S46 6刷り
 古書業界で全く人気がない島田一男です。でもこの2冊は揃えたいですね。特に『錦絵殺人事件』、これは島田版『黒死館殺人事件』です。ぺダンティズムが炸裂してます。ちょっと微笑ましいです。
城 昌幸
『若さま侍捕物手帳』
 何冊か出てます。4冊ほど持ってます。多分春陽文庫になってからは探偵小説は出てないと思います。

高木彬光

『能面殺人事件』 S31 6刷り
『能面殺人事件』 S62
 上記の新装版、文章が改訂されています。
『妖婦の宿』 S63
白雪姫・妖婦の宿・幽霊の顔・青髯の妻・恐ろしき毒・月世界の女
 神津恭介傑作推理劇場の第一集です。
『死美人劇場』 S63
幽霊の血・死美人劇場・薔薇の刺青・邪教の神・ヴィナスの棺・影なき女
 神津恭介傑作推理劇場の第四集です。二集と三集が本当にあるかどうかは本を見るまで信用しません。だって春陽文庫ですからね。
角田喜久雄
『高木家の惨劇』 S48 10刷り
『霧に棲む鬼』 S51
『奇跡のボレロ』 S51
奇跡のボレロ・霊魂の足
 普通は本の巻末にページ合わせでついている出版目録が表紙をめくった途端に出てきて驚きます。ただの製本ミスですが、さすが春陽文庫です。
『黄昏の悪魔』 S51
黄昏の悪魔・緑眼虫

『笛吹けば人が死ぬ』 S55
笛吹けば人が死ぬ・霊魂の足・Yの悲劇・沼垂の女・冷たい唇・私は誰だ・翳のある歯・悪魔のような女・汚れたハンカチ
 『奇跡のボレロ』に収録されていた霊魂の足がまたしても収録されています。何で? それが春陽文庫なのです。
浜尾四郎
『鉄鎖殺人事件』 S31
『鉄鎖殺人事件』 S49 23刷り
 上記の新装版。本文が二段組に変更になっています。初版はS21年と記述。だけど、上記の本はS31発行で初版。これはどういうことなんでしょう。そう、これが春陽文庫なのです。
『博士邸の怪事件』 S54
『殺人鬼』 S52  5刷り
三橋一夫
『ふしぎなふしぎな物語1(腹話術師)』 S51
『ふしぎなふしぎな物語2(鬼の末裔)』 S51
『ふしぎなふしぎな物語3(黒の血統)』 S51
『ふしぎなふしぎな物語4(第三の耳)』 S51
 春陽文庫の中で最も集めにくいシリーズです。各巻十数編収録の短編集です。代表的な作品は国書刊行会の『勇士カリガッチ博士』で読めます。何故か4巻だけ装丁が不揃いです。こういうところも春陽文庫らしいです。
『げんこつ青春記』 S48 2刷り
『ばんから大学』
 目録買いした本です。この2冊はこんなタイトルだから青春ユーモア小説だと思ってました。でも届いたのを見たらどうやら探偵小説でした。これだから春陽文庫は油断できません。

横溝正史

『人形佐七捕物帖全集全14巻(白背)』 S48〜
 現在流通している佐七全集の前の版です。そして春陽文庫の佐七にはさらにそれより前に次の2冊が出てます。
『人形佐七捕物帖(座頭の鈴)』 S46 17刷り
『人形佐七捕物帖(雪女郎)』 S46 16刷り
 上の2冊はほとんど見ません。
『横溝正史長編全集全20巻(白背)』  S49〜
 やはり、現在流通している全集の前の版です。そして次の2冊はそれより前に出てたものです。
『本陣殺人事件』 S47 16刷り
『蝶々殺人事件』 S48 26刷り
『探偵CLUB全16冊+スペシャル編2冊』
『合作探偵小説シリーズ全7冊』
『耽綺社合作探偵小説全集全3冊』
 3全集共現役本なので詳細は略。合作探偵小説シリーズは予告チラシにはっきりと全6冊と記されていました。しかもその予告チラシが入っていた本は最終巻間近の全集5冊目。なのに、最終的に7冊発行されました。これだから(以下略)