少年物

 探偵小説好きになった一番の原因は(ほとんどすべての人と同じように)図書館にあったポプラ社の『少年探偵団』『ホームズ』『ルパン』シリーズでしょう。それらの本(特に乱歩)が、多くの少年少女の心をつかんだのは、ストーリーの面白さや主人公の魅力はもちろん、「〜だったのです」や「〜なのでありましょうか」といった語り口、それにあの雰囲気たっぷりの挿し絵にあったと思います。青年の顔は誰もがバタ臭く、少年の頬はいつも紅く。少年ものを集める楽しさはそこにあります。顔が命の人形のように、表紙が命の少年もの。それらはそこに「ただ在るだけ」で楽しくなります。

 ただこの分野、集めるには苦労があります。それは物(ブツ)の保存状態が極めて悪い、ということです。それはそれの存在理由にあります。つまり「子供のものである」ということ。本嫌いの子のそれは当然「投げられ破られ落書かれ」、本好きの子のそれは「寝るときも食べるときも便所のお供にもされる」、からです。
 僕の持っている本のカバー破れや鉛筆書きの名前を見る度、かって「将来の職業は探偵」が、夢であったであろう少年たちに思いをはせてしまいます。



ここにコレクション画像をリンクする予定です。



単行本
『江戸川乱歩少年探偵シリーズ』全23巻
作/江戸川乱歩 装幀/松野一夫
光文社 S22〜
 僕の世代の少年探偵団はポプラ社版だけれど、ひと回り上の世代はこの光文社版です。装幀はあの松野一夫が担当(大人向けの独特のイラストと違い、さすがに言われないと分からないですけれど)。23巻揃いを買ってきましたが、カバー無しが6冊、カバー大破れが5冊もあり、綺麗なのを見つけるたびに買い替えています。
『たそがれの悪魔』日本名探偵4
作/角田喜久雄 装挿画/萩山春雄
ポプラ社 S30
 角田喜久雄が大人向けに書いた作品のリライト物。これは、角田が推理を控えめにし、話の展開を盛り上げる方向を選んだ頃の作品で、リライト向きの作品かも知れません。この「日本名探偵」全集は江戸川乱歩と大下宇陀児が監修しています
『恐怖の口笛』日本名探偵10
作/海野十三 装挿画/斎藤寿夫
ポプラ社 S31
 子供世界では巨人乱歩と肩を並べる海野十三。SF作品が多いのだけれど、これは数少ない探偵小説。主人公は名探偵帆村荘六。
『ゆがんだ顔』日本名探偵11
作/角田喜久雄 装挿画/斎籐寿夫
ポプラ社 S31
 『たそがれの悪魔』同様、こっちも大人作品のリライト物。乱歩の『緑衣の鬼』の犯人が緑ずくめだったように、この犯人は茶色ずくめの設定です(その色の選び方だけで乱歩のセンスがうかかがます)。主人公は青年新聞記者と少女「美々」。この頃の新聞記者はかっこいい職業の代表です。
『赤い妖虫』日本名探偵12
作/江戸川乱歩 装挿画/斎籐寿夫
ポプラ社 S31
 『妖虫』のリライト物。といっても「悪人がサソリの姿をして現われる」という、いつもの二十面相の展開と同じで、元の話はかけらも残っていません。
『魔法少年』日本名探偵25
作/大下宇陀児 装画/牧 秀人 挿画/萩山春雄
ポプラ社 S32
 悪と戦う主人公に作者は「催眠術」という技を用意しました。確かにこれなら金や力がなくても大人と戦えます。
『人間豹』探偵冒険
作/江戸川乱歩 装画/牧 秀人 挿画/北田卓史
ポプラ社 S31
 同タイトルの大人ものではラストシーンで裸の文代さんが熊の毛皮を着せられ衆人環視の中で虎と対決させられていましたが、このリライト物でもそのシーンは健在。でも裸じゃなくって残念です。
『怪星ガン』探偵冒険
作/海野十三 装挿画/伊藤幾久造
ポプラ社 S27
 探偵冒険シリーズに入ってはいるけれど純然たるSF作品。でも小さい頃はそれがショックで「騙された、もうこの人のは読まない」と決意したものでした。でもそれが、現在高いお金を出して集めてるんですから皮肉なものです。
『幽霊鉄仮面』探偵冒険
作/横溝正史 装画/成瀬一富 挿画/北田卓史
ポプラ社 S31 7版
 「はじめに」で作者は「恐怖心は好奇心に通じ、好奇心は研究心に通じる」と、怖い探偵小説を子供に読ませる事を肯定していて、微笑ましいです。
『白蝋の鬼』探偵冒険
作/高木彬光 装画/諏訪部晃、北田卓史 挿画/諏訪部晃
ポプラ社 奥付欠け
 数少ないですけれど、もちろん高木にも少年物があります。名探偵神津恭介と戦うのは宿敵「死神博士」。終章タイトルはお約束の「大団円」
『仮面城』少年少女名探偵金田一耕助シリーズ1
作/横溝正史 装挿画/田村 元
朝日ソノラマ S49
 少年向きハードカバーの「金田一全集」は多分これだけだと思います。編集構成は横溝作品の少年用リライトを数多く手掛けている山村正夫。全10巻
『三本指の男』少年少女名探偵金田一耕助シリーズ4
作/横溝正史 装挿画/田村 元
朝日ソノラマ S49
 『本陣殺人事件』を少年向きにリライトしたもの。極めて大人な殺人動機を「秘密の結婚」と表現していて笑いました。リライト物の楽しみはそういうところにもあります。
『夜光怪人』少年少女名探偵金田一耕助シリーズ6
作/横溝正史 装挿画/田村 元
朝日ソノラマ S49
 巻頭の「作者のことば」で横溝は金田一を「彼は天才ではなく、平凡な、いわば諸君の知恵の最大公約数的人物です」と書き、読者の挑戦意欲をかきたてています。
『ロボット博士』SFシリーズ1
作/海野十三 装画・岩井泰三 挿画/山内秀一
ポプラ社 S46 カバー欠け
 『怪星ガン』で反省したのか、SFシリーズと銘打った新シリーズに海野はごっそり移動します。最初からそうしといてくれたら(笑)。ちなみに僕のSF感性はこの頃のままです。
『怪人二十面相』
作/江戸川乱歩 装挿画/小林秀恒
講談社 S45
 S11年の少年倶楽部名作全集の復刻版。小林秀恒の描く二十面相がその後のイメージを決定付けました。
『黄色い部屋』世界名作探偵7
作/ルルウ 訳/高木彬光 装画/牧秀人 挿画/有安隆
ポプラ社 S32
 普通の少年は中学の頃、創元文庫でこの作品と出会います。小学生でこの作品と出会った少年は無茶苦茶「濃い」少年になったりするのでしょうか。
『透明怪人』世界名作探偵20
作/ウエルズ 訳/海野十三 装挿画/萩山春雄
ポプラ社 S32
 「もし自分が透明人間だったら…」現実の正しい少年たちの考える事はひとつです。
『灰色の幻』世界名作探偵28
作/ランドン 訳/江戸川乱歩 装挿画/萩山春雄
ポプラ社 S30
 大人の長篇小説を読んだあとは少年もので頭を休めます。最初の登場人物紹介のところで正体をバラしてたりして腰が砕けます。
『ポッツ家の怪事件』少年少女世界探偵小説全集15
作/クイーン 訳/亀山龍樹  装画/小谷野半二 挿画/平野光一
講談社 S33
 折り込み口絵のサービスが嬉しい。原作はマザーグ−ス物の『靴に棲む老婆(生者と死者)』。巻末では「おくつの中におばあさんがござる〜」と北原白秋の訳を紹介しています
『鉄仮面』世界名作全集5
作/ボアゴベー 訳/江戸川乱歩 装挿画/梁川剛一
講談社 S32
 乱歩が訳してなくても「乱歩訳」と表記されている本は買わなければいけないのです。
『黄金虫』世界名作全集59
/ポー 訳/江戸川乱歩 装画/梁川剛一 挿画/松田 穣
講談社 S28 函
 ミステリマニアはやはりここから始めなければいけないわけです。
『海底の黄金』世界推理小説文庫
作/ボアゴベイ 訳/江戸川乱歩 装挿画/山内秀一
講談社 S38
 世界で初めてアリバイトリックが使われました。コミック専門の古書店で100円で売られていました。こういう幸運を求めて古書マニアはどんなカスな店にも通わなければいけないのです。
『復讐鬼』世界名作文庫
作/大デュマ 訳/高木彬光 装画/沢田重隆 挿画/池田かずお
偕成社 S29
 内容に興味がなくても、高木訳だと買わなきゃいけないのです。
『緑の館』少年少女世界の名作
作/ハドソン 訳/香山 滋 装挿画/岡本莞爾
偕成社 S47
 ウン千円を出しても、香山 滋訳だと買わなきゃいけないのです。
『バルネ探偵局』探偵名作少年ルパン全集8
訳/保篠龍緒  装画/加藤 新 挿画/牧村史郎
講談社 S30
 ルパン物は集めるつもりはなかったのですが、デパートの古書市で奇跡的に保存状態の良いこの本が安価で売られていたために買いました。少年物では全滅な帯も完璧な状態で残っていて、一体これを持っていた子供はどんな性格のヤツなんだろうと考えてしまいます。
『妖魔ののろい』探偵名作少年ルパン全集4
作・ルブラン 訳・保篠龍緒  装画・加藤 新 挿画・牧村史郎
講談社 S30
 『バルネ探偵局』を買ったために、買った物。こっちの本はカバー破れ、落書き有り、ときわめて正しい保存状態です(笑)。

新書 文庫の項に続きます。(98/11/6)