大阪圭吉
 おおさか・けいきち(1913〜1945) 
 浜尾四郎と並んで僕が一番好きな本格作家。やはり浜尾と同じく若くして死去(32歳、戦地ルソン島にて戦死)。本格短編を書いていたが、戦局が近づくにつれ、ユーモア小説やスパイ小説を手がけるようになったため、ほんのわずかの作品しか残されていない。だが残された作品は短編でありながら、純度100%の本格魂に満ちており、その作風から日本のドイルと呼ばれている。
 出版社が著者紹介などをする場合、中島河太郎氏の「推理小説事典」を参考にすることが多いのだが、そこに「論理にすぐれているが、ストーリーの平板さが欠陥になっている」と書かれていて、その部分が引用されることも多い。だけど、読めばわかるとおり、この指摘は間違っている。たかだか20ページほどの短編に「本格である」こと以外に一体何が表現出来るというのだろうか? 『とむらい機関車』の悲しさは何なんだ? いやそれより何より、面白いんだからそれで良いじゃないか。書けるもんなら書いてみやがれ。





名作集2(日本探偵小説全集12)
創元推理文庫 89年
とむらい機関車・三狂人・寒の夜晴れ・三の字旅行会
 他に葛山二郎・蒼井 雄を収録。ご存知、僕に探偵小説の面白さを教えてくれた感謝すべき全集。12巻で終わってしまったのが誠に悔やまれます(というか、完結してくれてありがとうというべきか(笑))。この本で大阪圭吉を知り、その面白さに愕然としました。有名作家以外にも、こんなに面白い作品を書く人がいたのかと。僕の古書店通いは角川文庫の横溝正史、浜尾四郎の長編、この大阪圭吉の未読作を探すことから始まりました。『とむらい機関車』『三狂人』は代表作。『三の字旅行会』はユーモア小説時代の作品です。この本を読んだら間違いなく他の大阪作品を読みたくなります。
とむらい機関車(探偵クラブ)
国書刊行会 92年
デパートの絞刑吏・死の快走船・気狂い機関車・とむらい機関車・燈台鬼・闖入者・三狂人・白妖・あやつり裁判・銀座幽霊・動かぬ鯨群・寒の夜晴れ・坑鬼・幽霊妻
 そうこうしているうちにこの本が出版され狂喜しました。本格物はほとんど収録されています。すべての探偵小説から5冊選べといわれたなら、間違いなく選ぶ一冊でしょう。僕にとってはそれぐらい大切な本です。どれぐらい面白いかわかってもらうためにこの本のあおりを引用しましょう。
   日曜日ごとに繰り返される奇怪な轢死事件の意外な真相『とむらい機関車』、
   沈没した捕鯨船の乗組員がある夜帰ってきた…壮大なスケールに海洋ミステ
   リ『動かぬ鯨群』、雪降るクリスマスの夜、平和な一家を襲った惨劇『寒の
   夜晴れ』、炭鉱内に出没する姿なき殺人鬼の謎『坑鬼』。
 どうです面白そうでしょ? 他に『白妖』では有料道路内での自動車の消失がテーマになっています。しかし、『幽霊妻』はどうかと思います。この作品集に収録すべきじゃなかったんじゃないかと。これは死後発見された作品で執筆年数がわかっていませんが、どう見てもユーモア小説だと思います。だってこの犯人は……。だけど、「つきつめれば探偵小説ってみんなそんなものじゃないの」と、言われてしまえばそうなのかもしれませんが。
海底諜報局
熊谷書房 S16
 題名からもわかるとおりスパイ小説です。導入部はわくわくするのですが(乱歩の『海底の魔術師』は絶対これにインスパイアされたと思います)、途中が、ちと退屈でした。初めて目録買いをした本です。むっちゃ高かったです。後に函欠けだと知りショックを受けました。でも函付きだと15万円もします。良かったです、函付いてなくて。


 これで終わりです。こんだけしかもっていません。一番好きな作家のくせにこんだけなのか、と思われるでしょうが、そもそも本が出版されていないんだから仕方がないんです。国書が出版するまで本当にこの人は幻の作家だったのです。僕が知っている限り出ている本はあと二冊しかありません。一冊は昭和11年にぷろふいる社から出た『死の快走船』、もう一冊はタイトルも出版社も一切知りません。調べましたが分かりません。ひょっとしたらそんな本はないかもしれません。じゃあ、なぜ『死の快走船』だけでも持っていないのかと思うでしょう。答えは簡単です。高いからです。30万円もします。先日、函欠けが7万で出ていました。どっちもどっちです。どうせなら完本で入手したいものですが、さて、いつになるやら…。

 などと、いうことを書いていたら、無茶苦茶濃い大阪圭吉のページを紹介されました。行ってみて驚きました。なんだこれは!?おおっ、『死の快走船』!!凄いです、凄すぎです。感動しました。大阪の著作リストを見ました。あと二冊どころじゃありませんでした。こんなに出てました。でも、そのページでも幻扱いにされているもう一冊の探偵小説って、一体いくらするんでしょう。うう、怖い怖い。饅頭怖い。
 そのすごいページ、小林文庫さんはこちら