水谷 準
 みずたに・じゅん(1904〜)
 手元にある平成10年の資料ではまだ存命だから、今年95歳。「新青年」作家の数少ない証言者。乱歩のデビューに先駆けること5ヶ月、18歳の時だった。大学卒業後、博文館入社。翌年より、「新青年」の編集長として多くの新人(小栗虫太郎、木々高太郎、久生十蘭等)をデビューさせた。後に翻訳家として、シムノン等を紹介。昭和12年より始めたゴルフ関連の著書も多い。



『獣人の獄』と『赤と黒の狂想曲』

装幀を担当した横溝の『真珠郎』


獣人の獄
新潮社 S10年 函
 新作探偵小説全集の7巻。再版なので、初版と装幀が違っています。これを買ったときは、そういうことを知らなかったので、なぜ安いんだろう?と思っていました。いずれは買い替える運命なのでしょうか。ストーリーは巻き込まれ型。なんだか怪しい人間が次々に登場します。そしてそいつら同志が敵だか味方だか、敵のふりして味方だか、味方のふりして裏切ったりとかして、なんだかどうでもよくなります。
ある決闘・私刑(リンチ)
春陽堂 S29年
カナカナ姫・ある決闘・二つの影を持つ男・さらば青春
 日本探偵小説全集の16巻、大坪砂男と同時収録。
 『ある決闘』は第6回探偵作家クラブ賞受賞作。ユーモア探偵小説を提唱し実践した『さらば青春』は、無理矢理な演出をしなくていいためか、話がまとまっていて、僕が読んだ中では代表作扱い。
赤と黒の狂想曲
東方社 S30年
流星は赤かった・密月号事件・悲劇の触手・東方のヴィーナス・魔女マレーザ・暗殺者と薔薇・赤と黒の狂想曲
 バラエチィにとんだ短編集。話が無理矢理な長編に比べ、どれも面白く読めました。なかでも『魔女マレーザ』がお気に入り。「主人公がとある人間に出会い、その人から奇妙な体験告白を聞く」という、短編ではよく使われるスタイルの作品。ただし、雰囲気たっぷりな話なのに主人公が語り手に出会う場所がゴルフ練習場というのが興ざめです(笑)。
夜獣
講談社 S31年 函
 完結しなかった「書下し長編探偵小説全集」の一冊。『獣人の獄』と同じく、主人公巻き込まれ型ストーリー。前者よりはまとまっていますが、2冊続けて読んだら、2日後にはどっちのエピソードだったか、すっかり忘れてしまいました。 
 口絵の著者近影は乱歩そっくりです。
夜獣
講談社 S34年
 上記のロマン・ブックス版です。
殺人狂想曲
春陽文庫 95年
殺人狂想曲・闇に呼ぶ声・瀕死の白鳥
 表題作は『ファントマ』の翻案物。飜倒馬(ファントウマ)とか什武(ジュウブ)とかの凄い名前の日本人が登場してきます。でも一番凄いのは完結してないこと。「これが飜倒馬の第七の殺人である。が、筆者はここでひとまずペンをおくことにする」って、おくなよ、おい。『闇に呼ぶ声』は喜国のマンガのようなオチ(?)、『瀕死の白鳥』の非道徳さが嬉しい。

訳書
サン・フォリアン寺院の首吊人 シムノン著
角川文庫 S51年
 あとがきで「シムノンが日本で紹介される以前に、この本のフランス語版を丸善で入手しておきながら、少し読んで「面白くない」と、書棚の奥にしまいこみ、その後、『男の首』の翻訳を読んで、自分の不明を恥じた」という出会いが語られています。僕は読んでないので、どっちが正しいか(?)分かりません。
黄色の部屋 ガストン・ルルー著
日本出版共同 S28年
 異色探偵小説選集の1冊。
 創元推理文庫版しか読んでいないので、水谷版がどう違うのか、判りません。

装幀
横溝正史著 真珠郎
六人社 S12年 函
 僕の持ってるのは昭和51年に角川書店から出た復刻版です。題字・谷崎潤一郎、序文・乱歩、口絵・松野一夫、というそうそうたるメンバーのこの本の装幀を水谷 準が任されました。巻頭に「紫の弁」というタイトルで装幀のコンセプトが語られています。それに拠ると、表紙は絹ポプリンというYシャツ地が使用されているようです。