教養文庫
 教養文庫との最初の出会いは中学のときに買った『探偵小説の謎』(乱歩著)でした。本は面白かったけれど、つまんなさそうな名前の出版社だと思いました。巻末目録には、いかにもつまらなさそうな題名の本が並んでいます。次に出会ったのは数年後の高校3年生。続々と刊行される角川文庫の横溝正史だけは読んでいたけれど、すでに創元文庫の本格マークの代表作を読み終え、当時話題だった松本清張のつまらなさにガッカリし、中学の時、あれほど入れ込んだ探偵小説とはおさらばの状態でした。谷崎潤一郎や坂口安吾、寺山修司やつげ義春等が好きな正しい高校生に成長していました。
 『ドグラ・マグラ』……誰でも最初はその不思議なタイトルに立ち止まります。夢野久作……良い名前じゃないですか。乱歩のことについて書かれた文章で何度か目にした名前です。面白そうではありますが、社会思想社です。ひょっとしたら何かの研究書かもしれません。あらすじもありません。でも、この一文に魅かれました。「胎児よ胎児よ何故踊る」そう、有名な巻頭歌です。冬の日でした。一度も手を止めることなく読み続けました。ブウウーーーーーーン。僕の頭の中でも蜜蜂が飛んでいます。これから受験だというときに、友達がみんな手に参考書を持っているときに、僕の手の中には夢野久作があり、頭の中では蜂蜜が飛び続けていました。




 やっと教養文庫がアップできます。でも完成していません。本の感想を書こうと思って読んでいたのですが、読んでも読んでも終わりません。というか、1冊にかかる時間が他の本に比べて多いのです。大人になって、楽に読める本ばかり読んでいたツケです。つい他の本に浮気してしまいます。このままじゃいつまでたってもアップできません。予告してしまったおかげで、待っている人まで出る始末です。「入手困難度のランクもつけて下さい」リクエストまでされてしまいました。感想は今回はあきらめました。入手困難についてはさっぱりわかりません。春陽文庫と同じで、ここの在庫システムがどうなってるかさっぱり分りません。世間の人がとっくに絶版だろうと、古書店で必死になって探している本が現役だったり、風太郎が突然復刊されたかと思ったら、1冊だけだったり……。

 香山滋ファンの友人が池袋に住んでいる僕のところに遊びに来たときのことです。
「そうか、西武デパートの本屋になら教養文庫の香山滋があるかも知れない。いや、どこにも売って無くてね。よし、今から行ってくる」
 しかし帰ってきた彼の手には残念ながら香山はありません。
「ここになかったらごこで買えばいいんだろう」
 そのとき僕はひと事のように聞いていました。現在の話ではありません。
15年前の話です。
 教養文庫。それは川、簡単には越えられない深くて長い川。そして三途の川。これを越えてしまったら、あなたはもう戻れません(笑)。


小説の部
 「異端作家9人集」と名付けられたシリーズです。9人とはいっても正確には8人です(牧 逸馬と谷 譲次は同一人物)。三羽ガラス(夢野・小栗・久生)は現役なので買えます(とはいっても大きいところじゃないと無理ですが)。入手困難本は橘 外男と香山 滋、次は風太郎と谷 譲次でしょうか。
 古書店でそれなりの価格の作家別セット売りに出会うこともありますが、よっぽど気合いのある人以外はそれを買いましょう。悪いことはいいません、絶対にそれがいいです。
 バラで買うと、あとに続くのはただ地獄です(笑)。

牧 逸馬
全6冊 昭和50年
『浴槽の花嫁』世界怪奇実話
女肉を料理する男・チャアリイは何処にいる・都会の類人猿・ウンベルト夫人の財産・浴槽の花嫁・戦雲を駆る女性・肉屋に化けた人鬼・海妖
『血の三角形』 世界怪奇実話
血の三角形・生きている戦死者・カラブウ内親王殿下・運命のSOS・双面獣・土から手が・給仕と百万弗・果たして彼女は
『街を陰る死翼』 世界怪奇実話。
白日の幽霊・街を陰る死翼・聖エリザベスの嫉妬・戦争とは何だ・チャン イ ミヤオ博士の罪・八つ切られ三助・沈黙の水平線
『親分お眠り』 世界怪奇実話「
アリゾナの女虎・神変美容術師・海底の元帥・S S ベルゲンランド・親分お眠り・ゴールド ラッシュ艦隊・モンルアルの狼・斧を持った夫人の像・消えた花嫁・ロウモン街の自殺ホテル・女王蜘蛛
『第七の天』 ミステリー
第七の天・爪・窓の風・死三題・闇は予言する・上海された男・ジンから出た話・728号因の告白・神々の笑い・蝿を捕る浪人・紅茶と葉巻・砂・都会冒険・七時〇三分
『白仙境』 ミステリー
白仙境・百日紅・民さんの恋・舞馬・赤ん坊と半鐘・十二時半・ちょっとした事で・水夫と犬・碁盤池事件顛末・海へ帰る女・ギャングを語る・西洋怪異談・西洋狗張子
谷 譲次
全6冊 昭和50年
1『めりけんじゃっぷ商売往来』
めりけんじゃっぷ商売往来・めりけん一代男・春・哀しみの墓
2『テキサス無宿』
テキサス無宿・日米戦争は斯くして・国籍喪失者の文学
3『踊る地平線』
踊る地平線・テムズに聴く・ノウトルダムの妖怪・血と砂の接吻・しっぷあほうい!・長靴の春・白い謝肉祭
4『もだん・でかめろん』
5『新・巌窟王(上)』
6『新・巌窟王(下)』

久生十蘭

全5冊 昭和51年
1『魔都』
2『黄金遁走曲』
ノンシャラン道中記・黄金遁走曲・花束町一番地・モンテカルロの下着
3『地底獣国』
地底獣国・黒い手帳・海豹島・墓地展望亭・カイゼルの白書・カラスキー氏の友情・月光と硫酸・レカミエー夫人
4『昆虫図』
生霊・南部の鼻曲り・ハムレット・予言・復活祭・春雪・野萩・西林図・姦・母子像・春の山・虹の橋・雪間・昆虫図・水草・骨仏
5『無月物語』
遣米日記・犬・亜墨利加討・湖畔・無月物語・鈴木主水・玉取物語・うすゆき抄・無残やな・奥の海・著作年表

小栗虫太郎

全5冊 昭和51年
1『黒死館殺人事件』
2『白蟻』
完全犯罪・白蟻・海峡天地会
3『青い鷺』
二十世紀鉄仮面・青い鷺
4『潜航艇「鷹の城」』
潜航艇「鷹の城」・地虫・倶利迦羅信号・人魚謎お岩殺し・一週一夜物語
5『紅毛傾城』
源内焼六術和尚・絶景万国博覧会・紅毛傾城・金字塔四角に飛ぶ・ナポレオン的面貌・著作年表

夢野久作

全5冊 昭和51年
1『死後の恋』
人の顔・死後の恋・鉄槌・斜坑・幽霊と推進機・キチガイ地獄・押絵の奇跡・瓶詰の地獄
2『氷の涯』
氷の涯・難船小僧・木魂・笑う唖女・眼を開く・人間腸詰・けむりを吐かぬ煙突
3『悪魔祈祷書』
悪魔祈祷書・巡査辞職・戦場・少女地獄・白菊
4『ドグラ・マグラ』
5『爆弾太平記』
犬神博士・爆弾太平記・冗談に殺す

山田風太郎

全4冊 昭和52年
1『首』
みささぎ盗賊・万人杭・蓮華盗賊・山屋敷秘図・降倭変・首・怪異投込寺・天衣無縫・姫君何処におらすか・斬奸状は馬車に乗って
2『夜よりほかに聴くものなし』
眼中の悪魔・黒衣の聖母・大無法人・夜よりほかに聴くものなし
3『棺の中の悦楽』
虚像淫楽・万太郎の耳・満員島・棺の中の悦楽・わが愛しの妻よ
4『誰にも出来る殺人』
蝋人・死者の叫び声・黄色い下宿人・さようなら・誰にも出来る殺人・飛ばない風船・著作年表

橘 外男

全3冊 昭和52年
1『死の蔭探検記』
酒場ルーレット粉擾記・怪人シプリアノ・死の蔭探検記・恋と砲弾・逗子物語・生不動
2『ナリン殿下への回想』
ナリン殿下への回想・蒲団・聖コルソ島復讐奇譚・マトモッソ渓谷・令嬢エミーラの日記・雪原に旅する男
3『ベイラの獅子像』
博士デドウニヨールの「診断記録」・野生の呼ぶ声・米西戦争の蔭に・ベイラの獅子像・棺前結婚・著作目録

香山 滋

全3冊 昭和52年
1『ソロモンの桃』
ソロモンの桃・怪異馬霊教・白蛾・殺意・蝋蝎売り
2『オラン・ペンデクの復讐』
オラン・ペンデクの復讐・オラン、ペンデク後日談・オラン、ペンデク射殺事件・美しき山猫・心臓花・蜥蜴婦人・処女水・ネンゴネンゴ・天牛
3『妖蝶記』
海鰻荘奇談・妖蝶記・月ぞ悪魔・北京原人・キキモラ・ガブラ・著作年表

日影丈吉

全3冊プラス1冊 昭和53年
1『かむなぎうた』
かむなぎうた・飾燈・時代・月夜蟹・吉備津の釜・饅頭軍団・東天紅・ふかい穴・人形つかい・粉屋の猫・男の城
2『猫の泉』
猫の泉・大きな鳥のいる汽車・彼岸まいり・変身・大統領の高級秘書・崩壊・鵺の来歴・綴方教室・ねじれた輪・月あかり・ねずみ・吸血鬼
3『内部の真実』
内部の真実・著作年表
別『ハイカラ右京探偵暦』
舶来幻術師・明治の青髯・当世錬金術・新春双面神・右京閑日月・開化隠形変・怪異八笑人・幽霊買い度し・異説蝶々夫人・開化百物語・牡丹燈異変・美人通り魔・双児の復讐


評論、エッセイの部
 これがわかりません。どれが現役でどれが死んでいるのかさっぱりです。『紙上殺人事件』が現役だと聞いてビックリしましたが、誰かこの本が新刊屋に並んでいるの見たことあります? いないよね?
 困難本は『推理小説ノート』(中島河太郎)。それ以外は買えます。……多分。
 ここにアップした本以外には、あと『暗号』(長田順行)と『トリック専科』(松田道広)を探しています。

『探偵小説の謎』
江戸川乱歩 S37
 名著です。最近新版が出ましたので都合3種の表紙があります。
『推理小説ノート』
中島河太郎 S35
 これも名著。
『ミステリー食事学』
日影丈吉 81年
 『本業?副業?』のコーナーでちょっとだけ触れてます。
『ミステリ百科事典』
間 羊太郎 83年
 「眼」とか「猫」とか「蝋燭」とか「クリスマス」とか単語にこだわったミステリガ    イドブック。
『暗号と推理小説』
長田順行 86年
 暗号の専門書です。スパイになりたい人はどうぞ。

『魔術館の一夜』

泡坂妻夫 87年
 手品のネタ本です。マジシャンになりたい人はどうぞ。
『紙上殺人事件(からくちミステリ年評)』
大井廣介 87年
 松本清張以後のミステリについてのガイド本。僕には不要の本。著者はかの『野球殺人事件』の作者。
『現代海外ミステリベスト100』
仁賀克雄 91年
 現代海外ミステリについてのガイド本。これも僕には必要ないです。
『弊風一斑 畜妾(ちくしょう)の実例』
黒岩涙香 92年
 すごい本です。これも詳しくは『本業?副業?』をごらん下さい。
『小野小町論』
黒岩涙香 94年
 コンプリート者以外には不要の本です。