甲賀三郎
 こうが・さぶろう(明治26年〜昭和20年)
 乱歩、宇陀児と並ぶ戦前の巨星。木々高太郎との論争(木々は文学性、甲賀は論理性が大切と主張した)で有名。工学部出身のせいなのか、物理トリック、科学トリックが多いような気がしますが、全部読んでる訳じゃないので良く分かりません(苦)。短編と長編では作風が全然違うような気がしますが、全部読んでる訳じゃ(以下同文)。著者近影を見ると愛すべき人柄のような気がしますが、本人を知ってる訳じゃ(以下同文)。




『琥珀のパイプ』
春陽堂 T15 函
悪戯・琥珀のパイプ・大下君の推理・カナリヤの秘密・闖入者・母の秘密・或る夜の出来事・空家の怪・誘惑・ニッケルの文鎮・愛の為に・古名刺奇譚
 大正時代の本です。さすがにこの時代の本はあんまり持っていません。本体の背が水ぬれのせいか、ちと波うってます。それでも高かったです。にも関らず、なんか魅かれるものがあって買いました。家に帰って他書店の目録をみたら、すごく安い買い物だったということが分かりました。ところが、奥付の著者名をみると、全く知らない名前。しまった中身が違う。それで安かったのか!?と一瞬焦りましたが、なんのことはない甲賀の本名でした。
『甲賀三郎集』現代大衆文学全集12
平凡社 S4 函背割れ
支倉事件・妖女乱舞・阿修羅地獄・荒野・古名刺奇譚・琥珀のパイプ・錬金術
 旧仮名で読むと全部面白いと感じるようになってしまった僕の体はおかしいのでしょうか。
『姿なき怪盗』新
新潮社 S7 函
 またまた登場「10冊揃いで買うと100万円する新作探偵小説全集の一冊(こればっか)」。でもこれは安かったです。函の背が著しく灼けてて元の色が判別できないから。いつか、美本と買い替えるぞ!と。
 主人公は青年新聞記者獅子内俊次。対する相手は和製ルパンと呼ばれる
「怪盗三橋」。他に名前はなかったんかい「怪盗三橋」。でもこのルパンは人を殺すから良しとしましょう。殺します。殺しまくります。主人公の行く先々に現れて、関係者を殺しまくります。どこがルパンじゃい。そしてしだいに窮地に追い込まれる主人公。しかし、そんな回りくどいことやらずに殺してしまった方が話が早くていいと思うぞ「怪盗三橋」。でも、この手の話ではそれは言わないお約束。「ひと思いに、きさまを殺してしまわなかったのが、失敗だった」ほら三橋だってわかってるんだから。挿絵は岩田専太郎。
『犯罪発明者』
新潮文庫 S11 20刷り
犯罪発明者・焦げた聖書
 「姿なき怪盗」と同じく獅子内俊次物です。またまたこいつの行く先々で人が死にまくります。捜査をしないで家で寝ているほうがよっぽど社会平和になるすごい主人公です。ミステリ的には正しく意外な犯人が嬉しいです。「焦げた聖書」は好短編、僕のお気に入りです。
『血染の紙入』
春陽堂日本小説文庫 S11 帯
血染の紙入・隠れた手・浮かぶ魔島
 「浮かぶ魔島」って香山滋や海野十三みたいなタイトルだな、と思って読んでみたら内容もそういうのでした。甲賀三郎もこんなの書いてたとは知りませんでした。
『雪原の謀略』
大道書房 S18
 タイトルからも分かるとおりスパイ物です。だからまだ読んでいません。でも彼の代表作とされる「姿なき怪盗」などの新聞記者獅子内俊次を主人公とする一連の作品は、謎解き物というよりは活劇物に近いので、この作品も面白いことでしょう。その証拠に目次のタイトルを見てるとわくわくしてきます。
『姿なき怪盗』日本探偵小説全集
春陽堂 S29
 カバー袖に登場人物紹介が載っていますが、よくみるとちょっとネタばれ。
『妖魔の哄笑』
東方社 S30
妖魔の哄笑・四次元の断面
 いやぁ、目まぐるしいです。新聞連載を思いっきり意識して書かれているので、3Pごとに展開があります。冒頭の不可能犯罪が魅力的なのですが、あまりの事件の忙しさに途中からどうでもよくなります。ここにあらすじをざっと書いたとして、それを読んだ人は「全部で800Pぐらいの本かな?」と思うでしょう。でもそれは「全部で200Pの内の最初の50P分」でしかありません。なので内容は読後3日で忘れてしまいました。一つだけ覚えているのは、「あわや!? というところで犯人をいつも逃がせたいために、警察がものすごくアホウに描かれていた、ような気がする」ということでしょうか。
『蟇屋敷の殺人』
東方社 S30
 途中の展開はちと退屈ですが、最初の不可能興味が気になって読み進みました。もう少しでページがなくなるというのに、一向に解決の兆しをみせません。「おいおい、この話ちゃんと着地するんだろうな」と思ったら、「うわー、そりゃ目ッ茶アンフェアやん」という真相。いくらなんでも伏線引いとくべきでは。と思って表紙イラストを見る。「ありゃ、これが伏線?」というか、これネタばれやん。
『犯罪発明者』
東方社 S30 印、帯
犯罪発明者・母の秘密・琥珀のパイプ・ニッケルの文鎮
 T蔵書なので安かったです。T蔵書のくせに奥付も帯もついている不思議な本です。T蔵書が何か知りたい人は、(恐怖の大魔王が来なければ)21世紀に単行本になるであろう僕のエッセイ集を読んで下さい。
『池水荘綺譚』
東方社 S31
池水荘綺譚・気早の惣太
 タイトルはりっぱなお館物ですが、すっかり裏切られました。もちろん悪い方に(笑)。
 舞台はイギリス田舎村のとある貴族のパーティ会場。無実の罪で投獄された主人公が彼を信じる人々の力を借りて復讐をとげるというお話。いやぁ、それはそれでいいんですが、なんと
登場人物は全員日本人!!これではまるで黒岩涙香の翻案小説。ひょっとしてどこかに原作が?一体どういう訳?と思って年表などをパラパラやってみる。なるほど、初出は「婦女界」という婦人雑誌でした。にしてもこのタイトルはやめてほしかった。
『体温計殺人事件』
東方社 S32
体温計殺人事件・二川家殺人事件・霧婦人・誰が裁いたか・錬金術師
 「体温計殺人事件」はバリバリの物理トリックです。物理トリックの何が悪いんじゃあ。でもページが足らなかったみたいで、人間関係がちょっと中途半端。「誰が裁いたか」は代表作です。この短編集は僕のお気に入り。でも装幀がちょっと地味で残念。
『支倉事件』長編探偵小説全集10
春陽堂 S31 函
 「本格こそが主軸」と主張して議論を巻き起こした甲賀でしたが、結局彼の代表作は実録物のこの作品になってしまったというなんとも皮肉な話。しかしこの形式の作品なら、僕にとっては山本禾太郎の「小笛事件」(創元推理文庫、日本探偵小説全集11巻に収録)や島田荘司の「秋好事件」の方が面白かったです。というのはそれらが、犯人を弁護する立場で書かれているのに対し、この作品は警察側から書いているから。警察側の主人公はあの正力松太郎。しかも連載紙が読売新聞。こりゃ、どうみても偏ってます。よって見どころは裁判シーンではなく、支倉が捕まるまでの前半部分にあります。
『乳のない女』
春陽文庫 S41
 またまた新聞記者獅子内俊次が活躍します。というか、死人の山を築きます。探偵小説の殺人はあくまでゲーム、何人死のうが後味良いのが持ち味なのに、今度の被害者の中には幼児がいます。「子供を殺された親がその復讐で殺人を重ねる」という場合を除いて、こういうのはあんまりないので、ちょっとビックリしました。「乳のない女」という言葉の意味は最後に分かるのですが、もちっとこれについて描いてほしかったです。
『姿なき怪盗』
春陽文庫 S52 24刷り
  (私信)二階堂さん、この本見つかりました?
『黒岩涙香・小酒井不木・甲賀三郎集』日本探偵小説全集1
創元推理文庫 84年
琥珀のパイプ・支倉事件・蜘蛛・黄鳥の嘆き・青服の男
  「黄鳥の嘆き」は後に「二川家殺人事件」と改題。「蜘蛛」は島田荘司系名作。
 何度も言いますが、この創元文庫の全集は揃えなければいけません。
『緑色の犯罪』探偵クラブ
国書刊行会 94年
ニッケルの文鎮・悪戯・惣太の経験・原稿料の袋・ニウルンベルクの名画・緑色の犯罪・妖光殺人事件・発声フィルム・誰が裁いたか・羅馬の酒器・開いていた窓
 例によって甲賀の代表的な短編はこの本で読めます。この全集も揃えましょう。今なら大規模古本チェーン店でゾッキで出てます。
『妖魔の哄笑』
春陽文庫 95年
  現在入手可能ですが、これは別に買わなくてもいいです。
『犯罪・探偵・人生』
沖積舎 98年 函
 昭和9年に新小説社から出たエッセイ集の復刻版
 沖積舎の復刻版もこれで何冊買ったことやら。これはまだ安いからいいんだけどね。安くないけどね。どっちやねん。