浜尾四郎
 浜尾四郎(はまお・しろう)1896〜1935
 純粋探偵小説の中では大阪圭吉と並んで僕の最も好きな作家。残念なことに39歳の若さで死んだのと(現在の僕より若くして!)、33歳まで検事、弁護士などの職についていたため、残された作品数は3本の長編と16編の短編、それに未完長編が1本と非常に少ないのが残念(短編については現在どの資料をみても「全15編」と記載されていたが、今回数えてみると16あり、これだけでもこういうページを作った意義があったというもの)。その職歴からか、短編のテーマには裁判の欠陥や矛盾を扱うことが多いが、長編は徹頭徹尾「本格である」ということにこだわって書かれており、乱歩を代表とする「変格」がもてはやされた当時の日本において最も「本格」たらんとした人。初読のとき登場する男達のほとんどが美形であるのが不思議だったが、乱歩に同性愛を教えた人(「体で」じゃなく、「思想」をだよ(笑))と知り納得した。代表作は『殺人鬼』『鉄鎖殺人事件』


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浜尾四郎の著作集。
『博士邸の怪事件』の
イラストが笑えます。
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『鐵鎖殺人事件』
うー、カッコイイっす。

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鐵鎖殺人事件(新作探偵小説全集6)
新潮社 S8 函
 10冊揃いで買うと福沢諭吉が百人必要な新潮社の「新作探偵小説全集」。これはその中の一冊。この全集は装丁がいいです(画像2)。装丁命です(これ一冊だけなら諭吉は五人もあればおつりが来ますが、函がなければ夏目漱石が数人いれば大丈夫という価格の点からもわかると思います)。浜尾四郎の最高傑作とされていますが、実はまだ読んでいません。「そんなんで、一番好きだ!なんて言ってるのか」と叱られそうですが、これを読んでしまったら、この世にこの作家の本はもう他にないのです。今まで何度も手には取り、そのつど「うーん、まだだ」と、返す日々が続いています。笑う?
殺人小説集(浜尾四郎全集1)
桃源社 S46 函
彼が殺したか・死者の権利・悪魔の弟子・殺された天一坊・島原絵巻・正義・探偵小説作家の死・黄昏の告白・夢の殺人・彼は誰を殺したか・有り得る場合・肉親の殺人・マダムの殺人・不幸な人達・救助の権利・随筆集 ※随筆集の個別タイトルは略
 彼のすべての著作を網羅した全集の第一巻。この「1集」にはすべての短編(と思われていましたが、一本落ちていたことが今回判明)と、すべての随筆が収められています。代表作は『殺された天一坊』『黄昏の告白』『彼が殺したか』『彼は誰を殺したか(日本で一番最初の自動車による殺人らしい)』ですが、僕的には「ただのエログロナンセンス」と評されている『マダムの殺人』がお勧め。その理由は、タイトルとこの話の書き出し1行目で内容を想像してもらえれば分かると思うんですが。
「正彦! あんた何されてもいい? ほんとうに?」
 ね、分かったでしょ?(笑)
殺人鬼(浜尾四郎全集2)
桃源社 S46 函
殺人鬼・博士邸の怪事件・鉄鎖殺人事件・平家殺人事件(未完)
 彼のすべての長編と中絶作品が収められています。『殺人鬼』は浜尾が最も影響を受けたヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』に挑戦して書かれたもの(なんと、作中でその『グリーン家』をミス・ディレクションに使ってたりします)。だから『グリーン家』をこよなく愛する僕が浜尾四郎を好きになったのは当然のことだったのかも知れません。いやぁ、死にます。登場人物のほとんどが死んでしまいます。それで犯人当てをやろうってんだから、大したものです。あまりにも本格すぎて、イマイチ評価されていない点が残念です。『博士邸』はちと小粒。『平家』はプロローグのみで中絶。ああ『鉄鎖』。ガチガチ本格の『殺人鬼』にメロドラマテイストをプラスした『鉄鎖』が読みたい。「じゃぁ読めよ!」それを言わないで。僕もつらいのよ(何が?)この2冊の全集を買うために、人生で初めて古本に一万円札を出した点でも僕の中では思い出深い全集です。
浜尾四郎集(探偵小説名作全集)
河出書房 S31 函
殺人鬼
鉄鎖殺人事件
春陽文庫 S31
鉄鎖殺人事件
春陽文庫 S49
 上記と同じ本ですが、こっちは2段組です。装丁は同じでそこだけが違います。春陽文庫はこれがあるから油断ができません。
殺人鬼
春陽文庫 S52
博士邸の怪事件
春陽文庫 S54
 もともとはNHKのラジオドラマのために書かれたもので、ストーリーも、ラジオ番組のオンエア中(当時は全部生放送)の殺人というアリバイ物になっています。カバーに書かれた博士のイラストが笑えます。
博士邸の怪事件(探偵CLUB)
春陽文庫 96年
博士邸の怪事件・不幸な人達
 昔の春陽文庫の復刻版です。現在でも買えます。
浜尾四郎集(日本探偵小説全集5)
創元推理文庫 86年
彼が殺したか・悪魔の弟子・死者の権利・夢の殺人・殺された天一坊・彼は誰を殺したか・途上の犯人・殺人鬼
 この文庫の全集がなければ、僕が浜尾四郎を知ることも、大阪圭吉を知ることも、ひいてはこうやって探偵小説狂いになることもなかったでしょう。創元社戸川さんと、北村薫さんに感謝感謝。この本も現在買えます。『途上の犯人』はこの本でしか読めません。
強力犯篇(防犯科学全集4)※非小説
中央公論社 S10 函  ※長谷川 瀏・中村 勇との共著
公判廷より見たる強力犯罪者・実際捜査上より見たる強力犯事件・世界著名殺人事件の真相
 犯罪の研究書。浜尾四郎は『世界著名殺人事件の真相』を担当。元検事の立場で「クリッペン事件」「オスカー・スレーター事件」「エドマンド・ギャリー事件」等の(当時話題になっていたであろう)実際の事件について書いています。コレクターズ・アイテムです。間違っても読むことはないでしょう(おいおい)。